その時、脳は痛みを作った【後編】〜ぎっくり腰は脳を守る究極の自衛措置~
こんにちは!
神奈川県横浜市保土ヶ谷区、天王町駅の洪福寺松原商店街近くでブレインキュア治療院の院長をしています、石関祐輔です!
ここまで本シリーズをお読みいただき、ありがとうございます!
【基礎知識編】では痛みの原因について正しく知るための前提知識として、
〇小脳は「感覚の統御」および「認識や感情の制御」に関与している。
〇人間の基本動作(運動プログラム)は主に小脳に保存され、多くの場合で無意識に実行できる。
〇幼少期からの痛みの体験は、痛み記憶として脳内に残る。
〇脳には足りない情報を補い自ら創り出す「補完」という能力がある。
という脳に備わる能力についてお話させていただきました。
その時、脳は痛みを作った【基礎知識編】〜知られざる脳の力…記憶、統御・制御、補完〜
さらに【前編】にて、痛み回路が作られるメカニズムやその原因などについて、脳が作る痛み「ソフトペイン」とは何なのか徹底解説させていただきました。
・慢性痛の多くは、脳が過去の痛み記憶を再生している「ソフトペイン」
・引き金は「感情と思考のねじれ(理想と現実の狭間で揺れ動く心の中の葛藤)」と、それを抑え込もうとする「思考の暴走」
・プロのアスリートのスランプも同じ仕組みで起こる
・世のあらゆる治療法は、結局すべて「脳のプログラム」にアクセスしている
・強い刺激は、痛みの記憶を上書き強化してしまうリスクがある
その時、脳は痛みを作った【前編】〜あなたの痛み、本当は「脳が再生している記憶」だった!?〜
ぎっくり腰は運動プログラムのシャットダウン
ではここで、一度ソフトペインが作られる流れを整理しつつ、いよいよぎっくり腰のメカニズムについて説明していきます。
心身環境因子の影響により脳内神経活動の偏りが生じることで、感情を統合するシステム(感情プログラム)にエラーが起こる。
↓
1.運動プログラムのエラーが同時に起こると、運動プログラムと痛み記憶をリンクさせる神経回路が作られる(運動時痛)。
2.感情プログラムと痛み記憶を直接リンクさせる神経回路が作られると同時に、負の感情との連合記憶が作られる。または姿勢を制御するプログラムと痛み記憶をリンクさせる神経回路が作られる(安静時痛)。
↓
心の奥にある「感情と思考のねじれ」(本当はこうしたいのに、こうせざるを得ないという理想と現実との狭間で激しくせめぎ合う心の中の葛藤)を抱え込む。
↓
理性(意志)の力で無理やり抑え込もうと様々な理由を作り、理屈で自分を納得させようと考え続けてしまうことで思考が暴走する。
↓
小脳のプログラムにエラーが起こる。
↓
過去の痛み記憶が再生される。
これが脳の中で痛みが作られるメカニズムでした。
さてこのとき、小脳のプログラムのエラーが許容量を完全に超え限界にまで達したとき、何が起きるのでしょうか?
そう、小脳のプログラムの一部が、緊急シャットダウンしてしまうのです!
パソコンやスマホが使い過ぎにより熱暴走を起こし、強制シャットダウンを起こすのと似ています。
これ以上使い続けたら本体が壊れてしまうという時は、その前にシステムが自ら電源を落として守ろうとしますよね。
それと同じで、脳が自らを守るために運動プログラムが緊急シャットダウンを起こし、加えて過去の痛み記憶が一気にフルボリュームで再生されるために激痛が起きる…これがぎっくり腰や寝違え、四十肩の激痛発作などの正体だったのです。
急性腰痛の9割が治療しなくても自然に治ると言われているのも、これで説明がつきます。
小脳のプログラムのシャットダウンとそれに続く再起動だと考えれば、納得ですよね?
だからBFIのようなソフトな刺激でも、脳に正しいスイッチを入れることができれば、激痛がスッと消えていく。
これが当院でやっとの思いで来院されたぎっくり腰の方が普通に歩いて帰っていく秘密です。
「身体の自由を奪う」「考えごとをやめさせる」ことで脳の中でも特に大容量の「運動プログラム」と「思考プログラム」の2つを強制的に休ませるために、脳は激痛というブレーキをかけてくる。
これは脳の究極の自衛措置、自己防衛反応なんです。
また近年はとくに物理的な負担がない状態だったり、軽い作業中に発症するぎっくり腰が増えていることを考えても、とても合理的な考え方だと思います。

私自身の体験記…「寝違え」
ここまで話を聞いても、「いやいや、まだ信じられない…」「本当にそんなことが起きるの?」そう思っている方もいるかと思います。
なのでここからは、私自身の体験も交えて説明していきたいと思います。
私の運動プログラムの緊急スイッチはどうやら腰ではなく首にあるようで…そのためぎっくり腰にはなったことがないのですが、首の寝違えを何度も経験してきました。
職業柄、本当に情けない話ですが…。
とくに大きな首の寝違えが、2024年の年明けのことです。
年末年始の休みも今日で終わり、明日から出勤…といった矢先の出来事でした。
寝違え、と言っても私の場合はお昼ご飯を食べたあと立ち上がろうとした瞬間に起きました。
とくに何をしたわけでもない…ただ立ち上がろうとしただけ…それなのに、その瞬間「ビキッ」と首に電撃が走り、そこからちょっと首に力が入ろうものなら激痛により首を一切動かすことができなくなったのでした。
あまりの痛さに、私はその瞬間こう思いました。
「痛い、痛すぎる…。こんな激痛が記憶の再生ってマジか…!?」
普段あれだけ患者さんに説明してきたのに、いざ自分がなってみると「もしかして間違ってるかも…?」と疑ってしまうほどの激痛。
「この痛みを“脳が作った痛み”だなんて言われたところで、信じてもらえないのも当然か…」
あまりの痛さにまったく下を向けず、妻に下着まで着替えさせてもらった時は、情けなさで泣きそうになったのを今でも覚えています…(笑)。
謎はすべて解けた…!“犯人”は自分の心の中にいる!!
では、この時の私に何が起きていたのでしょうか?
実は私にはこの激痛の正体が何なのか、確信がありました。
2014年4月に神奈川新町に開設し、約10年続けたあおぞら整骨院を1月いっぱいで閉めることが決定。
年末から診療と並行して閉院の準備に追われていました。
設備や備品の処理、様々な手続き、患者さんへのあいさつ…やることは山積みです。
常に思考はフル回転。
「あれやらなきゃ、次はこれやらなきゃ…あ、そうだ!あれも…」
徐々にタイムリミットが迫る中、次第に焦燥感も強くなっていき、思考プログラムの過労が積み重なっていきました。
そして、ついに“Xデー”はやってきました。
年末年始、整骨院も夜勤の仕事もすべて休みにし、妻と久しぶりにゆっくりと過ごしたり実家に帰り甥っ子に癒されたりと十分に英気を養い、ふと「明日から仕事か…ラストスパート頑張るか…」そんなことを考えながら立ち上がろうとした瞬間に悲劇は起こったのでした。
「ビキィ!!」
首から背中にかけてまるで電撃を食らったかのような痛みが走り、その瞬間から首~肩、背中をまったく動かすことができなくなりました。
ちょっとでも動かそうものなら強烈な激痛が上半身を襲います。
しかし休んではいられません。
妻にドラッグストアで鎮痛剤と湿布を買ってきてもらい、なんとか激痛を誤魔化しながら診療と閉院準備に追われながら、私は今回の寝違えについて考えていました。
「これだけやることに追われていたら、そりゃ脳も過労を起こすよな…。
でも、それにしてはタイミングがおかしい。
もっと何か…自分の中に何かがあるはず…」
そして寝違えを起こしたタイミング、そのとき考えていたことを思い出し、冷静に自己分析してみると…うすうすは感じてはいたものの、考えないようにしていた自分の中の「感情と思考のねじれ」が浮かび上がってきたのでした。
それは…
「今までたくさんの人に応援してもらい、支えられてきた。今来てくれている患者さんのことを考えると整骨院を閉めたくないし、閉めることになってしまって申し訳ない…。
でも、一方で同じくらい今のまま続けるのは正直つらい…。何より、これ以上妻に迷惑をかけたくないし、妻だけでなく私の身を案じてくれている友人たちに心配をかけ続けるのは申し訳ない…だから、やめられて本当はホッとしてしまった」
「それに続けるにしても、保険診療はこれ以上やりたくない。どれだけこちらが気を揉みながら真摯に対応したとしても、紙切れ一枚で支払いを拒否されてしまってはやっていられない。
でもほとんどの患者さんに求められるのは質の高い自由診療ではなく、単純な金額の安さ…だから根本的には治せないと分かっていても保険診療をやらざるを得ない…」
謎は…すべて解けた!
寝違えという激痛を起こした犯人…もとい、原因はこの(心の)中にいる!
つまり、「本当は辞めたいけど、患者さんのためにも辞められない…」「保険診療はもうやりたくないけど、やらざるを得ない…」という感情と思考のねじれ(理想と現実の狭間で揺れ動く心の中の葛藤)と、それらの感情を無理やり理屈で納得させようとフル回転してきた思考の暴走。
加えて患者さん、妻や友人たちに対する申し訳なさや罪悪感。
自分自身の実力不足に対する怒り、くやしさ。
「これでやっと辞められる…」と安堵してしまった自分への自己否定。
これらの感情が一気に解放され、激痛となって現れた結果が今回の寝違えだったのでした。
脳が激痛でブレーキをかける「本当の理由」
私の体験から見えてきたのは、こういうことです。
感情と思考のねじれ(理想と現実の狭間で揺れ動く心の中の葛藤)を、力ずくで意志の力で抑え込もうとする「理性的すぎる思考の暴走」こそが、痛みの記憶の再生スイッチを押す最大の引き金になる。
「いや、私は別に深い葛藤なんて抱えてないけど、ぎっくり腰になりましたよ」と思った方。
実は自分でハッキリ自覚できる葛藤よりも、自分でも気づいていない無意識の葛藤のほうがずっと厄介なんです。
現代社会で生きている以上、誰もが何らかの感情と思考のねじれを抱えています。
仕事を辞めたいけど辞められない。本当はこの人と離れたいけど離れられない。本音は嫌だけど、立場上やらざるを得ない。家族のために自分を押し殺してきた…。
ただし感情と思考のねじれを抱えているだけでは、必ずしも激痛が出るとは限りません。
感情と思考のねじれがあることを前提に、そこに「思考の暴走(あれこれ理屈で無理やり抑え込もうと考え続ける状態)」が加わったとき、初めて脳のバランスが崩壊します。
脳は想像以上にデリケートな臓器です。
思考の暴走により特定の神経回路に大量の信号が流れ込み続けると、まるで電気回路がショートしてしまうように神経回路がパンクしてしまいます。
そうなってしまっては、最悪の場合はうつ病や認知症といった「脳そのものを壊してしまうレベル」の危険な状態になりかねません。
だからこそ脳は、そのような事態を事前に阻止すべく、自身を守るために「最終手段」を発動するのです。
「もうこれ以上、考え続けるな!動き続けるな!すべてを一旦やめなさい!」
その指令を最も確実に実行する方法が、激痛です。
ぎっくり腰、寝違え、四十肩の激痛発作になると、ほとんどの人は思考を完全に奪われます。
「あれもしなきゃ、これもしなきゃ」と頭の中でグルグル回っていた思考が、痛みの前に強制終了する。
これこそが脳の自衛反応の正体です。
激痛は、脳があなた自身を守るために発動した究極の自衛措置、非常ブレーキだったのです。

痛みの原因…脳代謝の視点から
さて、ではここまでの話の流れを整理しつつ、脳代謝の視点からソフトペインについて説明していきたいと思います。
「ストレス社会」と言われるほど非常に複雑化した現代社会のなかで、心身環境因子の影響により「感情と思考のねじれ(本当はこうしたい、でもこうせざるを得ないという理想と現実の狭間で揺れ動く心の中の葛藤)」を抱える
↓
それを意志(理性)により無理やり抑え込もうとすることで思考が暴走する(思考回路の過活動)
↓
それが引きがねとなり、脳内神経活動の偏りが発生する
↓
小脳のプログラムがエラーを起こす
↓
小脳回路の異常活動を引き起こすと同時に痛みの記憶が再生される
これがソフトペインが脳の中で作られるメカニズムです。
心身環境因子の影響により起こる脳内神経活動の偏りは、そのまま脳代謝バランスの乱れにもつながります。
なぜなら神経回路の活動異常によって生じた脳代謝バランスの不均衡は、局所の代謝亢進と別領域の代謝低下を引き起こすからです。
それはどうしてでしょうか?
人間の血流量は、基本的に常に一定に保たれています。
それは脳全体の血流量も同様に一定に保たれているため、局所に過度な血流が集まれば、当然他のどこかの血流が低下することになるからです。
具体的には思考の暴走(思考回路の過活動)が起こると、そのエリアの血流が増えます。
すると相対的に他のエリア(主に運動神経回路のエリア)の血流が減ることになり、こうして脳代謝バランスの不均衡が起こるのです。
まるで均衡を保っていたシーソーや天秤が、一気に片方に傾いてしまうように…。
こうして脳代謝バランスの不均衡が許容範囲を超えると、脳は自らを守るためにこれを是正、回復させるべく他領域の神経回路を活性化させることで代謝バランスを回復させようとします。
そのターゲットとして白羽の矢を立てたのが「痛みの記憶回路」なのです。

血流を含めて代謝が極端に低下してしまったエリアを「欠落場所」として脳が認識
↓
それを補完するために痛み記憶を形成する神経回路を活性化させて血流を増やす
↓
血流を調整し、代謝バランスを変える
痛みの記憶回路はひとたび活性化すると一定レベル以上で持続し、痛みにより身体の行動を制限させると同時に痛みに意識を向けさせることで思考回路の過活動を鎮めることで、脳代謝バランスの回復を果たします。
つまり、脳は「脳代謝バランスの監視および回復」という仕事も担っていたのです。
この仕事も基礎知識編でお話しした「脳内補完」と呼んでもいいのではないでしょうか?
こういった新しい理論から、うつ病や抑うつ状態の患者がもし激痛発作(ぎっくり腰、寝違えなど)を起こしたら、それは大うつ病の発症(うつ病の重症化)を回避するために行った脳の自衛措置だと言えます。
ちなみに脳梗塞を発症した脳では、その直後に反対側の脳(例えば右脳の一部に梗塞が起きたら、左脳の一部)の血流が増えることが知られています。
そして脳梗塞を起こした場合、その周りのエリアに脳はすぐに新しい神経回路を作り始めるそうです。
例えるなら崖崩れで通れなくなった道路そのものを修復するのではなく、いちはやく迂回路の道路建設を始める、といったイメージです。
こういった新しい神経回路を形成する働きは、神経のリモデリングと呼ばれています。

まとめ
今回も長くなってしまいましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
最後に、今回の話のポイントをまとめていきます。
・ぎっくり腰や寝違え、四十肩の激痛発作…急性痛の多くは、脳が自らを守るための究極の自衛措置だった
・その手段として「運動プログラムの強制シャットダウン」と「激痛による身体と思考の強制停止」
・感情と思考のねじれ(理想と現実の狭間で揺れ動く心の中の葛藤)を、力ずくで理性(意志)の力で抑え込もうとする「理性的すぎる思考の暴走」こそが、非常スイッチを押す最大の引き金となる
・脳は「脳代謝バランスの監視および回復」という仕事も担っていた
・脳代謝バランスの乱れ(不均衡)が許容範囲を超えたとき、脳はそれを是正・回復させるために「痛みの記憶回路」を活性化させ血流および代謝を変えようとする
昔は重いものを中腰で持ったときに起こることが多かったぎっくり腰も、今ではそう多くありません。
着替えているとき、顔を洗おうとちょっと屈んだだけで、椅子から立ち上がろうとしただけなのに…そんな腰にほとんど負担が掛かっていない場面で起こす方が増えています。
原因についても、腰を捻じったから、骨盤が歪んでいるから、筋肉を傷めた、炎症を起こした…そう考えるにはさすがにもう無理があります。
同じように寝違えについてもストレートネック、肩こり、筋を傷めた…もういい加減にハード論(痛み=組織の障害、変形や歪み、炎症など身体に原因を求める考え方)に固執するのはやめにしませんか?
あなたのその痛みは、変形や組織の障害、炎症といった身体の問題を知らせるサインであるケースはほとんどありません。
あなたの脳が、あなた自身を守ろうと発しているメッセージなのです。
「ちょっと立ち止まって、自分の本当の気持ちに耳を傾けてみませんか?」
「無理して走り続けるのは、もうやめにしませんか?」
「本当はあなたが望んでいることは何ですか?」
脳はそうやって、あなたに気づいて欲しくて「痛み」という手段で訴えているのかもしれません。
ちょっと信じがたい話だったかもしれません。
しかし、もしこの話に少しでも「あ、そうかもしれない」と感じる部分があったら、それはきっと、あなたの中の何かがすでに気づき始めているということです。
それは今はまだ小さな一歩かもしれませんが、確実にあなたを変える大きな一歩へとつながります。
ぜひ先入観や固定観念を捨て去り認識を変え、痛みのない新たな世界への扉を開く第一歩となることを祈っています。
そして「もう少し詳しく聞いてみたい」「自分のケースについて相談してみたい」「優しいタッチケアを試してみたい」という方は、ぜひ一度、当院にお越しください。
納得がいくまで丁寧にご説明&お一人おひとりに合わせた完全オーダーメイドで、脳から痛みにアプローチしていきます。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました(^^)